伊那谷の風景から工場法を思う

秋晴れの心地よい日、長野県南部を訪れました。 南アルプスの風景は美しく、街並みにはどこか懐かしくホッとする温かさがありました。仕事でお会いした方々はもちろん、街中で何気なく言葉を交わした方々も素敵な人たちばかりで、すっかりこの土地のファンになりました。機会があれば、ぜひプライベートでも再訪したい場所です。

私は、管理者の方々を対象に労務管理の講義を行う際、「労働法の成り立ち」に少し触れるようにしています。 実務からかけ離れているようにも思えますが、現場で想定外の課題に直面したとき、本当に役立つのは法やルールの知識そのもの以上に「何かおかしい」と気づく問題発見力です。そうした違和感を捉えるセンサーを養うきっかけになればと、地道にお話しし続けています。

農耕社会から封建時代、市民革命、そして産業革命へ。 労働法の原型である工場法が 誕生したきっかけは、製糸工場などで過酷な労働を強いられた弱者を保護するためです。この法律はヨーロッパ各国で誕生した後、約100年遅れて明治末期の日本でも成立しました。そして、現代の日本の労働基準法にも弱者保護の精神は貫かれています。例えば、強制労働や中間搾取、児童労働、さらには適切な労働時間管理の不備といった人権無視の働かせ方には特に厳しい罰則を科しています。

今回訪れた伊那谷は、かつてその製糸業を支える繭の供給地として貢献していた地です。岡谷の製糸工場にその繭が運ばれ、そこで働く女性労働者たちが懸命に働き、国に富をもたらす一方で工場法も成立、これが光と影の成果なのでしょうか。帰りの高速バスから伊那谷の美しい風景を眺めていると、当時を懸命に生きた人々の思いが、ほんの少しだけ胸に伝わってくるような気がしました。