※ ネタばれあります
表題の映画を先週土曜日にレイトショーで見てきました。
すでに様々なところで感想、評価が上がっているので改めてここでは詳述しませんが、映像の美しさ、音の静けさ、ダブル主演マリールーと真理の深まっていく対話には引き込まれました。
岡本多緒さん演じる真理のセリフが棒読みに聞こえましたが、これは濱口監督の演出手法だそうですね。セリフを台本読みのように語らせることで、相手の反応に集中できるとのこと。それによってリアルな演技が引き出されるのだそうです。
観客としても、淡々と語られていたからこそ、ぐんぐん深まる会話に集中できた気がします。
それとは別枠で目に付いたのは、映画で描かれる介護施設の労務管理の粗さ。
・夜勤者向けの仮眠スペースを経営者が一方的に職員寮に変えてしまう(仮眠スペースはどこへ・・・)
・その職員寮を利用できるのは、緊急時に対応できる人(これはわからなくはない)
・職員寮の入所条件を経営側の人が「仕事とプライベートを一緒にするのが好きな人」と明言している(これを日本でやったらブラック認定かも)。
・マリールーがヘビースモーカー(施設長なのに施設内でも・・・)
・看護師ソフィーは施設長のマリールーと方針の違いで日頃から対立している。施設内で急に具合が悪くなった真理を看護するソフィーに対し真理は「ソフィー、あなたは何でマリールーが気に入らないの?」と尋ねている(「施設長のプライベートな知人をなぜ私が本来の業務時間を削って看なきゃならないの」というソフィの心の声が聞こえました)
まだありますが、これ以上は重箱の角つつきになりそうです。
ユマニチュードを導入するなど、利用者を大事にしている施設であるということは良く伝わりました。
一方、スタッフがどんどんバーンアウトしていく様は、真理の「資本主義はNature(地球や人間も含む)を土台にして拡大している」という語りが可視化されているようで、そういった問題点も良く伝わります。
しかし、せっかく美しい映画なのに、現実味のない労務管理をベースとしてストーリーが構築されているのは残念なことです。
とはいえ、介護施設の労務管理の描写を社労士などが監修したら、この美しさは半減以下になるかもしれません。
感動ともやもやした思いの両方を抱えながら映画館を後にしました。
監督がこの映画に込めたメッセージの1つは、言葉にならない思いを無理に言葉にせずに大事にすること、とのこと。見終わって数日たっても言語化しきれない思いが巡るのは、監督のねらい通りかもしれません。